どれだけ断熱できれば、従業員の負担を減らせるか。
働きやすい環境設計が、積年の目標だった。

まずはトーカロ株式会社の事業内容について教えてください

弊社は溶射技術において国内シェアトップの企業です。溶射技術というのは、お客様のさまざまな製品や設備に、金属やセラミックなどの材料で表面加工を施し、新しい性質や機能を与える技術のことです。例えば身近なものですと、スマートフォンの製造で不可欠な半導体。それをつくるための装置には溶射技術が用いられています。さらに規模が大きいものですと、風力発電や水力発電などの設備にも溶射技術は欠かせません。多くの特許技術も保有し、お客様のさまざまなニーズや課題にお応えするよう、技術を日々向上させています。

新工場の建設における課題とは？

もともとあった工場は、建設から50年近く経った古い建物でした。そのため断熱性が低く、夏は暑く冬は寒い環境でした。また、溶射というのは装置の作動による騒音がかなり大きいため、工場内にブースを設置し、その中でロボット施工を行うのですが、ブースの遮音性が乏しく作業者は耳栓が欠かせませんでした。
このように、従業員の就業環境を改善することが、本工場の最大のミッションでした。

当初予定していた在来工法から、提案されシステム建築へ変更。決め手はコストメリットの大きさだった

システム建築で工場建設を決断した決め手は？

工場を建てるとなったときに、まずは設計会社に設計を依頼しました。こちらの要望を伝えて出来上がった設計をもとに建設会社に入札を投げかけました。２次入札時点でシステム建築なら同程度の機能を維持しながら、コストが約10％もカットできるというVE（バリューエンジニアリング）提案をいただいたのです。約10％というのは、総コストからするとかなり大きいですよね。そこからシステム建築のことを詳しく知ると、大きな支障もなく、今回の工場建設には適している工法であることがわかったので、決定しました。

コストカットの要因はどこにあったのでしょうか？

やはり基礎のところですね。コスト削減効果の大きい「いちいち工法」を採用できたので、直接的な工事費だけではなく、工期もぐんと短縮できその分の経費も削減できたというわけです。工場建設というのは一大事業ですから、コストは非常に重要な要素でした。

従業員の環境改善に加え、対外的なアピールも可能に。
採用課題も大きく前進へ

システム建築を採用して良かった点は？

まず最大の課題だった断熱性ですが、建設途中に建屋ができた段階で中に入ってみたときに、すでに体感できました。そのときは真夏だったのですが、外の気温との差を通常の日陰とは全く違うレベルで感じましたね。
建設前は、いかに断熱性が優れていると聞いても、数値ではなかなかイメージしにくく、どこまで旧工場と変化があるのか心配でした。しかし実際に完成してみると、空調を半分効かせるだけで夏は涼しく過ごせる状況となりました。当然空調服（バッテリーで可動する小型ファンを内蔵した作業着）は不要になりました。冬も防寒着を着用する人数が各段に減りました。外の寒気が侵入しにくいため、だいぶ快適な環境です。
従業員からも好評ですね。これまでは、旧工場では、工場内で暑い・寒いとよくこぼしていたのですが、それが一切なくなり、ほっとしています。

さらに副次的に良いこともありました。まず、外からお客様を招きやすくなったので、我々の事業を実際に目で見ていただける機会が増えたことです。溶射技術というのは、言葉で説明するだけではなかなかイメージしづらいものですが、実際に見ていただくことで、お客様の課題をどのように解決できそうか、具体的にイメージして検討いただけるようになったのです。これはビジネス面でかなり有効です。

さらに、新工場は外から見てもきれいで、管理棟内も広くて快適なため、来社される方にも好印象となりました。弊社は高卒で入社する方もいますが、事前に親御さんと工場を見に来られて、ここに入社できたらいいなぁと親から言われたと後から聞いたときは嬉しかったですね。
工場の働きやすさは既存の社員だけでなく、採用面でも非常にメリットが大きいと実感しています。これからはどの業界も、人材確保に苦心する時代です。新工場建設をきっかけに、引き続き就業環境を改善していきたいですね。

システム建築を検討している方へ向けて、アドバイスをお願いします。

まず、断熱性が課題になっている大型の工場や倉庫は、システム建築がぴったりだと思っています。システム建築の良さはシンプルな機能で高品質を希望する場合、そしてコストを極力抑えたい場合に活きてくるので、そういう建物を希望される方は、ぜひ検討をおすすめします。

システム建築がもたらした
ビジネスへの効果は？